沿道の建物 耐震化促す

首都直下地震対策に取り組む東京都は現在、震災時に救急救命や物資の輸送などの生命線となる「特定緊急輸送道路」の沿道建築物の耐震化を進めている。

 地震で通行が遮断されると、人命救助にも大きな支障がでることから対策は急務だ。

沿道建築物の耐震化を推進してきた都議会公明党(長橋桂一幹事長)は12日、耐震化が完了した三鷹芙蓉ハイツ(三鷹市)を訪れ、回収促進に向けた課題を探った。 

1995年の阪神・淡路大震災では、緊急輸送道路の沿道建築物が崩壊し、道路が封鎖され、緊急車両の通行や物資の輸送が滞った。その教訓から国は耐震改修促進法を制定し、建物の耐震化を進めている。 都も、都内の緊急輸送道路(延長約2000キロ)のうち、沿道建築物を耐震化する必要がある特に重要な道路を特定緊急輸送道路(延長約1000キロ)に指定。 

建物の耐震診断を義務付け、耐震化工事の助成制度を実施している。これらにより、国、都、さらに区市町村の助成で、工事費用のうち最大9割の助成を受けることができる。
だが、耐震化工事には、診断の結果によって建て替えが必要となることもあり、高額の工事費や住民の仮移転が必要となる。都都市整備局によると、昨年末時点で93.7%の耐震診断が終了したものの、 「耐震化か必要な沿道建築物は約5000棟あるが、まだ3割しか進んでいない」として、対策を急いでいる。
都は耐震ポータルサイトや相談窓口の設置、啓発映像の制作などのほか、対象となる建物を職員が直接訪問し、助成制度を活用して耐震化工事を行うよう呼び掛けている。 

15年2月に耐震化工事が完了した三鷹芙蓉ハイツは、築39年の地上7階、総戸数I15戸(3棟)の分譲マンション。12年に耐震診断を実施した際、建物の耐震性能を表す構造耐震指標(Is値)が低い部分が見つかった。数回の住民説明会を経て、14年4月、耐震化工事の実施に至った。
同ハイツでは、地震の揺れを低減させる制震プレース工法を採用。マンションの外壁から補強する工法のため、住民の仮移転が必要なく、日当たりや風通しへの影響も少ないことなどが選定理由となった。

同ハイツで耐震化の検討・実施を進めていた当時、住民管理組合の理事長を務めていた田中勇次さんは「工事費を積立金で賄えたことや景観に影響がほとんどないことから、スムーズに決定できた」と振り返る。 さらに工事の成果について「以前は震度3程度の地震でも”大きな揺れ”と感じた。(耐震化後には)そういうことがなくなった」と話していた。
視察後、谷村孝彦議員は、「多くの人を守るための重要な取り組み。引き続き、耐震化を後押ししていく」と述べた。

都議会公明党は、特定緊急輸送道路の沿道建築物の耐震化を、議会質問などで一貫して主張。13年12月定例会では、長橋幹事長が、診断にかかる費用の助成期間延長や工事費の軽減を要望した。
さらに、15年12月定例会で橘正剛議員が、改修工事などへの助成期間延長を求めたほか、大地震が発生した場合の被害状況を収録した映像を用いた普及啓発、改修の取り組み状況や体験談などの情報提供を訴えていた。 これに対し、都は「沿道建築物全ての耐震化に向けた道筋を検討し、耐震改修促進計画に反映させると強調。映像を用いた普及啓発や情報提供の強化にも取り組むと答えていた。
(公明新聞8月22日付)